2025.05.23 葬儀における世界基準のドレスコードについて〜ローマ教皇の葬儀参列者から学ぶ
今回はドレスコードのお話をいたします。
なぜドレスコードの話をしようと思ったかというと、フランシスコ教皇の葬儀に参列したトランプ大統領のコーディネートが話題になっているからです。
2025年4月26日にバチカンで執り行われたフランシスコ・ローマ教皇の葬儀において、アメリカのドナルド・トランプ大統領が、ネイビーといいますか明るいブルーのスーツと同色のネクタイで参列したことが国内外のメディアで大きく報じられました。
日本人からしたら、葬儀の際に「ブルーのスーツにブルーのネクタイなんてけしからん!」となるのが一般的でしょうが、今回のトランプ大統領の参列の際のコーディネートは日本のみならず、海外のメディアも反応したのはなぜか?
ここにドレスコードが関わってくるわけです。
この報道を見て、個人的に思うところが色々あったので、葬儀における一般的なドレスコードを踏まえたうえで、個人的な感想をお話したいと思います。
♦動画目次
00:00 オープニング
01:37 バチカン指定のドレスコードについて
03:45 トランプ大統領のドレスコードについて
05:10 その他の参列者のドレスコードについて
10:44 クロージング
12:44 まとめ
♦バチカン指定のドレスコードについて
なぜトランプ大統領が明るめのブルーのスーツに明るめのブルーのネクタイで参列したことが話題になったのか?
それはローマ教皇庁、いわゆるバチカンが公式にドレスコードを指定していたのにも関わらず、その通りのスタイリングをしてこなかったことに起因してます。
ではバチカン側が指定した男性のドレスコードとはどういうものかというと、
「ダークスーツ」=基本は黒無地
「黒の長いネクタイ」=いわゆる結び下げのネクタイということです。
「白いシャツ」
「ジャケットの左襟に同色のボタンをつけること」
日本においては葬儀に参列する際の一般的なスタイルです。
指定ドレスコードのうち、「ジャケットの襟に同色のボタンを付ける」に関して私よくわからなかったんですが、同色のボタンについて調べたところ、
•スーツと同じ黒色の小さなボタンまたはピンを左襟に装着する
•その位置には本来バチカンから授与された勲章や栄誉章のみを着けることが許されている
•一般参列者の場合は、装飾的なピンや国旗バッジなどは避け、黒の無地ボタン(ピン)で弔意を示す
という意味合いだそうです。
要するに左襟のフラワーホールには、スーツと同じ黒のボタンのみ装着が許されるという意味です。
この習慣は、格式ある国際儀礼やバチカンの伝統的なプロトコルに基づいたもので、装飾を控え、厳粛な場にふさわしいシンプルなアクセントとして定められているとのことです。
公式な国際儀礼、特にバチカンが絡むとこういう伝統的な儀礼があるようです。
こういう儀礼がある事自体、初めて知りました。
♦トランプ大統領のドレスコードについて
トランプ大統領は公式なドレスコードに従わず、明るめのブルーのスーツに明るめのブルーのネクタイをしていたのがこのドレスコードに違反していたというわけです。
さらに、左の襟にはアメリカ国旗のピンが付いていたので、これもドレスコード違反です。
ではどれくらいの明るいブルーだったのかというとこんな感じです。
他の参列者と比較して明らかに明るいですよね。
これに欧州やアメリカの主要メディアが「トランプ氏の服装は確実に基準を外れていた」と指摘し、「誰のルールにも従わないという彼のメッセージを明確に伝えるものだった」と伝え、それを日本のメディアも同様に伝えるという図式です。
トランプ大統領が「なぜ青を選んだのか」についての公式な説明はなく、意図は明らかにされていないとのことなので、どうしてこのコーディネートになったかは本人以外知る由もありません。
これらのことからトランプ大統領がルール違反とか礼儀欠如でメディアに叩かれるのはある意味致し方ないかなと思います。
♦その他の参列者のドレスコードについて
一方で、実はバチカン側のドレスコードを守っていない著名な参列者が他にもいたという事実がありますが、その方々はトランプ大統領ほど叩かれていません。
その中に民族衣装で参列している首長がいらっしゃいますが、これは対象から外します。
●バイデン元大統領
ネクタイがトランプ大統領に負けず劣らずの明るいブルーです。
スーツは黒無地ではなくダークネイビーのようです。
ネクタイがドレスコード違反ですね。
欧米において葬儀の際にネイビーなどのダークスーツを着用することは一般的です。
黒、ネイビー以外にチャコールグレーでもOKとされていて、今回の葬儀でもチャコールグレーのスーツを身につける方はチラホラいっらっしゃいました。
ただネクタイは欧米でもやはり黒なんですよね、基本は。
なので明るめのブルーのネクタイは明らかにドレスコード違反ですが、トランプさんもバイデンさんという新旧の首長が同じような色のネクタイをしていることから、もしかすると昨今のアメリカでは葬儀の際に明るめのブルーもOKになっているのかもと疑いたくなります。
調べてみましたが、そのような事実は現状はありません。
●イギリスのウィリアム皇太子
ネクタイは黒ですが、スーツはネイビーですね。
個人的にはやや明るめのネイビーに見えますが。
今回はダークスーツがドレスコードなのでネイビー無地はOKですし、このスタイルは英国王室が葬儀の際に多用する正式な喪服のコーディネートとのこと。
英国の正式なルールを踏襲した、とも言えるかもしれません。
ちなみにウィリアム皇太子の横にいらっしゃる方はどなたかわからなかったんですが、ホワイトタイ=いわゆる燕尾服を着用されています。
実はこの写真以外でも、燕尾服を着用されている方はちょこちょこ見かけました。
正礼装なので、一見何の問題ないように思えますが、バチカン側のドレスコードとは異なります。
ローマ教皇の葬儀において午前中に燕尾服を着用することは、原則として公式なドレスコードには含まれておらず、一般参列者や外交使節は黒スーツがルールです。
ですが、各国の王室関係者や一部の外交儀礼では、伝統や国ごとの慣習により燕尾服やモーニングコートを着用する例があって、それに準じているのだと思います。
ウィリアム皇太子の例と同様ですかね。
●ウクライナのゼレンスキー大統領
黒い襟付きの上着に黒いズボン、は黒いシャツという全身黒ずくめのスタイルです。
ネクタイはしていませんね。
ゼレンスキー大統領がスーツを着用しない理由、これは2022年2月のロシアによる侵攻以降、一貫して「戦時下のリーダー」としてカジュアルな軍服風スタイルやTシャツ、トレーナーなどを着用し続けているという自身の姿勢に基づくものですが、今回はさすがに襟なしのカジュアルな服装は失礼に当たると判断し、襟付きの上着を選んだのではと言われています。
ということで、バチカンが指定するドレスコード以外で参列している方はトランプさんの他にもいらしたということです。
トランプ大統領が明るめのブルーに明るめのブルーのネクタイをしていてひときわ目立っていたのは事実で、それを指摘されるのは致し方ないとも言えますが、トランプ大統領のキャラクター故に報道が過熱した面もあると思いました。
ここで最後に今回の件を見て個人的に思うことは、ドレスコードを指定することは参列者にはすごく助かるのではと思ったことが一点です。
洋装文化の欧米では今回のドレスコードは至極当たり前にも思えますが、実際指定されないと各国の文化や独自のドレスコードを適用してしまうことって多々あるんじゃないかなと思いました。
ただウィリアム皇太子や燕尾服を着用されていた方々は、今回のドレスコード指定をわかっていてもあえて自国の文化習慣を選んだということで、これはこれで素晴らしいなと思う反面もあります。
基本は指定されたドレスコードは守ること。
そうすることがルールだし、変な批判をあびなくてもすむということにほかならないなと思いました。
洋装においては歴史の浅い日本の場合、国内では歴史が浅いながらもローカルなドレスコードがシーンごとにあるわけですが、世界に出たら通用しないわけで、グローバル視点で考えるならば一般的なドレスコードだけでも理解すべきだなと思いました。
♦まとめ
【葬儀における世界基準のドレスコードについて】
•世界的な儀礼では、ドレスコードは厳格に守るのが原則
•指定がある場合は、忠実に従うことが最も無難
•伝統を重んじる姿勢は大切だが、それを理解したうえでの選択が必要
•文化や政治的背景が絡む場では、服装ひとつで大きな意味を持つ
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