2026.09.18 / なぜ熊本の被災地で「ウールTシャツ」が必要とされたのか?真夏にウールが役立つ理由
2026年7月28日、熊本県熊本地方で大きな地震が発生しました。
マグニチュード7.1。
熊本県の宇城市(うきし)と氷川町(ひかわちょう)では、最大震度7を観測しています。
この地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
今回、この熊本地震の被災地へウールTシャツを届けるという取り組みがあり、ozieもその活動に賛同し、ウールTシャツを提供しました。
ただ、今回「私たちが寄付をしました」という話をしたいわけではありません。
むしろ今回、私自身が改めて考えさせられたことがあります。
それは、真夏の熊本で、なぜウールTシャツが必要だったのか?ということです。
ウールと聞けば、多くの方は、セーター。コート。冬のスーツ。
こういうものを思い浮かべると思います。
私たちも普段ウールTシャツを販売していますが、「夏にウールって暑くないんですか?」
とお客様からよく聞かれるくらいですので、こう思われる方が大半かと思います。
それにもかかわらず、今回、真夏の被災地でウールTシャツが必要とされた。
これは、ウールという素材を理解するうえで、とても重要な理由があります。
今回は、なぜ真夏の被災地でウールTシャツが必要とされたのか。
この出来事をきっかけに、改めてウールTシャツについて深掘りしたいと思います。
目次
♦動画目次
00:00 オープニング
02:05 今回の支援について
03:19 服の価値は環境によって変わる
03:41 なぜメリノウールのTシャツだったのか?
06:41 綿・ポリエステル・ウール、どれが一番いい?
07:37 防災袋にウールTシャツを入れるべきなのか?
08:50 普段の生活にも使えるウールTシャツ
09:30 ozieでウールTシャツを作った理由
10:31 まとめ
♦今回の支援について


今回寄付のきっかけとなったのが、「WOOL FOR ONE, ALL FOR KUMAMOTO」という取り組みです。
REDA JAPAN株式会社の代表取締役を務められた上野伸悟さんが運営されている神田岩本町百貨店さんを中心に、ブランドや企業の垣根を越えて、メリノウール製品を熊本へ届けようという活動です。
ozieも、この活動に協力させていただきました。
なぜメリノウールを使ったTシャツを寄付したのか?
単に「服が足りないからTシャツを送る」という話ではなく、被災地では断水などにより、衣類を十分に洗濯できないという問題が起きていました。
これがメリノウールのTシャツを送った一番の理由です。

【通常時】
着る➡汗をかく➡洗濯する➡乾かす➡また着る
【災害時】
着る➡汗をかく➡水・電気が十分に使えない➡洗濯しにくい➡同じ衣服を長く使うことも
普段でしたら、汗をかいたら洗えばいい。
臭いが気になったら着替えればいい。
非常に単純です。
でも、水や電気が十分に使えなくなると、それができません。
この瞬間、「衣服に何を求めるのか」という基準自体が変わってきます。
♦服の価値は環境によって変わる
普段Tシャツを選ぶときには、色、デザイン、価格、シルエットなどを見ると思います。
ところが洗濯が自由にできない環境では、以下のような性能の重要性が、一気に高まります。
そして、この条件と相性が良かったのが、メリノウールだったわけです。

【通常時】
デザイン、価格、肌触り、シルエット
【洗濯しにくい環境】
臭いにくい、湿気をためにくい、気温変化に対応しやすい、繰り返し着やすい
♦なぜメリノウールのTシャツだったのか?
ではこの状況下でなぜメリノウールのTシャツだったのか?
《理由① 臭いが気になりにくい》
ウールには、臭いが気になりにくいという特徴があります。
ここは少し誤解されやすいので、「ウールなら洗わなくても絶対に臭わない」という意味ではありません。
そうではなく、綿や一般的な化学繊維とは違った仕組みで湿気や臭いを管理するため、比較的、臭いが気になりにくく、洗濯回数を抑えやすい素材なんです。

汗をかく➡湿気・臭いの原因となる分子➡ウール繊維内部が吸収➡臭いが表面に残りにくい➡洗濯時に放出
さらにウールは水蒸気を吸収して肌表面を比較的乾いた状態に保ちやすいため、細菌が増えにくい環境をつくります。
さらに、汗から発生する臭いの原因となる分子を繊維内部に取り込み、洗濯するまで保持する性質があります。
ですので、旅行、登山、出張といった、頻繁に洗濯できない環境でもウールが使われています。
今回のような被災地でも、この特徴が意味を持ったわけです。
《理由② 汗と湿気を管理しやすい》
夏ですから、当然汗をかきます。
「では速乾性の高いポリエステルの方がいいのでは?」と思う方もいると思います。
ここは少し整理が必要で、ウールが得意なのは、液体の汗をものすごい速さで乾かすというより、肌の周りにある水蒸気や湿度を吸収・放出することです。

外気 ⇄ ウール繊維が湿度を調整 ⇄ 外気
↑
身体からの汗・水蒸気
だから、汗をかいたときの蒸れやベタつきを抑えやすく、衣服内を比較的快適な状態に保ちやすい。
ここは、「吸汗速乾」とは少し違う考え方です。
ウールは、湿気をため込まないように調整してくれる素材と考えると、分かりやすいと思います。
《理由③ ウール=冬だけではない》

大半の方がウール=冬と思いますよね。
事実ではありますが、事実と異なる部分もあります。
ウール=冬というよりも、本来は、温度を調整する素材です。
確かに厚手のウールは暖かいです。
セーターもコートもウールです。
ですから、「ウールは身体を暖める素材」というイメージになるのは当然です。
ただ、ウールの機能はそれだけではありません。
ウールには、寒いときには繊維の中に空気を保持しやすく、暖かいときには熱や湿気を外へ逃がす。
つまり、衣服内の温度や湿度を調整する性質があります。
薄手のメリノウールは、アウトドアやスポーツの世界では、一年を通して使われています。
だから、真夏の熊本でウールTシャツというのも、素材の性質を考えると、実は不思議な組み合わせではありません。

♦綿・ポリエステル・ウール、どれが一番いい?
ここまでの話ですと、「ウールって万能で素材的に一番優秀なんですね」と思われるかもしれません。
単純にそういうことでもありません。
素材には、それぞれ得意なことがあります。

例えば、汗を大量にかくスポーツで、とにかく早く乾かしたい。
こういう場面では、高機能ポリエステルが非常に合理的です。
普段使いで気軽に洗濯し、価格も抑えたい。
そうであれば綿は非常に優秀です。
一方、洗濯回数をなるべく減らしたい。
湿気や臭いが気になる。
暑い場所と冷房の効いた場所を行き来する。
こういう条件では、ウールの特徴が非常に生きてきます。
素材の良し悪しではなく、環境によって正解が変わる。
今回の熊本での支援は、それを非常に分かりやすく示してくれたと思います。
♦防災袋にウールTシャツを入れるべきなのか?
「これから防災用品としてウールTシャツを買った方がいいんですか?」
と質問がありそうですが、これに関してもそこまで単純な話ではないと思っています。

ウールTシャツは防災の主役ではありません。
当然ですが、災害時にまず必要なのは、水や食料、医薬品、衛生用品、防寒や暑さ対策などです。
ウールTシャツがそれらに代わるわけではありません。
ただし、非常時の衣類を考えるときに、「何枚持つか」だけではなく、限られた条件で、どれだけ快適に繰り返し使えるかという視点でみたときに、ウールTシャツは、非常時の衣類として非常に合理的な選択肢の一つだと思います。
臭いが気になりにくく、繰り返し着用しやすいため、用意する衣類の枚数を抑えやすいというメリットもあります。
これは、今回私自身も改めて認識したところです。
♦普段の生活にも使えるウールTシャツ
今回の話は、災害時だけの特殊な話ではありません。

洗濯しにくい、着替えにくい、気温が変化する。
これを日常に置き換えると、
出張、旅行、飛行機、新幹線、長時間の移動、夏の通勤などのかなり似た条件があります。
例えば2泊3日の出張。
綿Tシャツなら、汗をかいたから明日は違うものにしよう。となるかもしれません。
でも、臭いが気になりにくく、シワになりにくく、気温変化にも対応しやすい。
そういうTシャツなら、持っていく服の枚数そのものを減らすこともできます。
「高級Tシャツ」というだけではなく、「機能するTシャツ」でもあるわけです。

♦ozieでウールTシャツを作った理由


ozieでも以前から、イタリアのREDA社が手掛けるREDA ACTIVEというウール生地を使ったTシャツを作っています。
使っているのは、ニュージーランド産の細いメリノウール100%。
約17.5ミクロンのSUPER120’s相当のウールを使っています。
色展開は、白、ネイビー、ブラック、グレー。
一般的なセーターのような厚手の生地ではなく、Tシャツとして着用できるジャージー素材となります。
滑らかで、ドレープがあり、家庭でも洗えて、シワにも比較的強い。
以前の動画では、「大人がTシャツをきれいに着る」という観点からこの商品をご紹介しました。
でも今回、全く違う環境でウールの機能が必要とされたことによって、改めて思ったことがあります。
それは、この素材の価値は、高級だからという理由だけでウールを使うということではないということです。
♦まとめ
今回、一番お伝えしたかったのは、
ウールは、環境に対応する機能を天然の繊維そのものが持っている素材であるという事です。
ウールだから高級。ウールだから冬。ということではありません。

なぜ真夏の被災地でウールだったのか?
1、臭いが気になりにくい
2、湿気を管理しやすい
3、気温変化に対応しやすい
4、洗濯しにくい環境で使いやすい
洗濯しにくい、汗をかく、暑い場所と涼しい場所を行き来する。
そういう少し厳しい条件になったときに、普段はあまり意識しない素材の性能が、大きな意味を持ってきます。
そして、今回の熊本での支援を通じて、オジエがウールTシャツの商品ページで説明している以下の内容が、単なるスペックではなく、実際の生活を支える機能なんだということを改めて感じました。
「吸放湿性があります」
「臭いにくいです」
「温度調整機能があります」
ozieとして今回少しでもお役に立つことができたのであれば、非常にありがたいことだと思っています。
そして、一日も早く被災された皆さまが普段の生活を取り戻されることを願っています。
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