ozieお客様インタビュー第二弾は、インテリアデザイナーで美術大学講師でもある田代様にお話を伺いました。デザイナーさんならではのファッションやもの選びのこだわりなど興味深いお話を聞かせてくださいました。
インタビュアー:柳田敏正、山本綾子(ozie)
ノーネクタイが基本のスタイル
- 山本:
- 田代さんはインテリアデザイナーでご自身で事務所を経営されていらっしゃるということですが、お仕事をされる時はお好きな格好でされていらっしゃるのですよね。
- 田代様:
- そうですね。この歳になると、お客様もよく知っている方が多いので、きちんとしていく必要もあまりないんです。若いころはやはり気を使って新しいお客様のところはネクタイをして行ったのですが、最近は新しいところでもノーネクタイで行っています。
御社の商品を最初に選んだ理由も、僕はまずネクタイをしないので、ネクタイをしないで済むスタンドカラーのシャツがきっかけです。スタンドカラーのシャツはこの頃あまり他では売っていないので。
- 柳田:
- そうでしたか、ありがとうございます。
スタンドカラーではないですが、今日お召しのシャツもとてもよくお似合いですね。そのアーガイルの模様の黒のビズポロは販売枚数が少ない物だったので実際にお召しになっているお客様にお会いできて感激です。
- 田代様:
- ネクタイがなくても違和感がないスタイルを基準に洋服を選びます。例えば白い色だとネクタイがないと間が抜けるとか、見た目はわからないけどよく見ると模様があるものとか、プレーンなものよりは味があるものがいいかなと思います。ノーネクタイなりにもきちんとした格好と思い、僕はポロシャツは着ないのですがこれはOKです。出張もかなり多いので、シワになりずらくノーアイロンという点も気に入っています。
- 柳田:
- ビズポロを初めてつくったのは2008年でした。ポロシャツ生地なのでインナーにTシャツを着ないで素肌に着られるし乾きもよい。アイロンも必要ないものをという視点で開発したシャツです。近年のクールビズや2011年の節電対策の実施でだいぶ認知されましたが、当時、同じようなシャツを作っている人は誰もいませんでした。今こうしてお客様にビズポロのメリットを感じていただけるてということが、作り手冥利につき、とてもうれしいです。
色にこだわり、個性を表現
- 柳田:
- デザイナーさんという職業柄でしょうか、ご自身のスタイルをお持ちですし、シャツ1枚も確固たる基準を持って選ばれていらっしゃいますが、他にこだわっていらっしゃる点はありますか。
- 田代様:
- 色ですね。
僕がずっと師事していたインテリデザイナーの先生がいるのですが、その方が決して白いシャツを着ないで必ずカラーシャツを着るのです。例えば、えんじ色のシャツに薄いピンクのネクタイとか、すごくおしゃれに着るんですよね。先生がご活躍された時代は今よりもネクタイをするのが常識だったので、さすがに師匠はネクタイはしていました。でもそのうるさい常識の中で工夫を凝らし、ほかの人とは違うのだという個性を出していました。そういった「ここまではきちんと従うけれど、少しくらいは色気を出させてよ」という考え方が好きですし、おしゃれだと思います。その影響で自分も色のあるシャツを着るようになりました。
- 柳田:
- 決められたルールの中で個性を出す。素敵ですよね。
デザイナーさんなのでお客様に色のセンスを信用していただく必要もあると思います。
- 田代様:
- 僕らは空間のデザインをしているので、師匠からはよく「色をきちんとしてないといけない」と言われました。お客様が自分たちの事務所にいらした時に、「こんな人に任せられるか?」と思われてはいけないという考えです。なので事務所では、インテリアや小物の全てにいたるまで使っていい色が決まっていました。
白と黒とモスグリーンと藤色。それ以外のものは置くなと言われていました。
- 山本:
- 本当ですか、徹底してますね。でもやはり色が少ない方が、統一感があってすっきりして見えますものね。
- 田代様:
- そうです。師匠曰く、白と黒のベースカラーに加えられるのは2色がぎりぎりだと。
ただし例外もあったんです。トイレットペーパーとティッシュだけは黄色でした。白だと他と浮いてしまうし、鼻をかんだ後にグリーンやピンクはないだろうということで。装飾の色ではなく機能の色です。
- 柳田:
- すごいこだわりですね。そのような環境にいらっしゃったからこそ、ご自身の感覚をしっかりお持ちで、ファッションアイテムをお選びになるということがよくわかりました。
学生の目を意識してノーネクタイに
- 柳田:
- ファッションというのは、相手や状況に合わせなければいけないという場合が多いと感じています。例えば年上や目上の人に会う時は身なりに気を遣いますよね。僕自身はそれはいい意味でとらえていて、相手に対する思いやりやおもてなしの気持ちに近いと考えていますし、そのような気持ちでシャツ作りに取り組んでいます。
田代さんのようにご自身のスタイルを貫き通すというのは一見ゴールは真逆に見えるのですが、相手の目を意識しているという点で、考え方のベクトルは似ているのでないかと思います。
- 田代様:
- 僕も年上の方と仕事をする機会も多いです。でも美術大学で講師をしているので、学生との付き合いも多いんです。よく飲みに行ったりします。そこでネクタイをしていると、学生と自分の間にすごい違和感を感じます。
- 柳田:
- 今日のようなノーネクタイのスタイルの方が、学生さんも話しかけやすいでしょうね。
僕は経営学部だったので大学の先生はスーツにネクタイの先生が多かったけれど、美大の先生だとスーツスタイルじゃない人が多いのでしょうね。
- 田代様:
- そうなんです。だからあまりきちんとしてない方がよいです。他の先生もネクタイはあまりしてないですし、スーツだと、どこのサラリーマンという目で見られますね。生徒とも壁もできますし。
- 柳田:
- 年下の人への思いやりというのもあるのですね。
- 田代様:
- はい。だからこそ今のスタイルになってきたというところが強いです。講師業はもう20年以上続けていますので。学生もしょっちょう事務所にきて飲みに連れていったりもするので、学校とそれ以外で全く恰好が違うのも変だなと思いまして。違和感を持たれるのが嫌なんです。
特に学生からすると、僕は学生が将来なりたい職業という場合が多いので、僕がどういう仕事をしているのかすごい興味があるんですよ。そういう中で裏と表がない方がいいと考えています。
- 柳田:
- 田代さんがノーネクタイのスタイルになるには、確固たる理由があったのですね。
一般的にシャツを作る時には、まず生地を選んでシャツを作る。というところから始まります。だけど、実際にそれをどういう風に着てもらおうか、というイメージがない場合が多いんですよね。
でも僕は必ず、この生地だったらこういうシャツを作って、こういう風に着てもらったらうれしい、着てもらいたいというところをイメージして作るようにしています。
なので、どういうファッションをしたら周りの人とどのような関係になるか、そんなところまでイメージしていらっしゃる田代さんのお考えには非常に共感できるとことがあります。
ラフな格好はお客様にリラックスしてもらうためにも
- 柳田:
- 田代さんが30代の頃というのは、デザインのお仕事とは言え、仕事で回る先でノーネクタイというのは珍しかったのではないでしょうか。
- 田代様:
- はい。ですので新規のところはやっぱり怖くてね。なので若いころはさすがに新しいところはネクタイをして行きました。
ただ、やっぱりシャツは色のついたシャツでした。
- 柳田:
- その頃はシャツの色も白シャツ全盛ですよね。
- 田代様:
- でも僕は着なかったですね。色のシャツを探すのが大変でした。
- 山本:
- デザイナーさんなのでファッションでも個性を出したり、ポリシーを持っていることは重要ですよね。
- 柳田:
- 田代さんはやはり雰囲気がありますよね。
- 田代様:
- 確かにそのように言われる機会は多いですが、デザイナーという職種というよりは、独立しているからという理由の方が強いかもしれません。人に使われていたら確かにこんなに自由にはできていなかったと思います。ただインテリアデザイナーという職種上、気を付けていることはあります。
僕らの仕事は住空間を作ることではあるんですけれど、お客様の家族の構成とか好みを直接的に聞くだけではなく、例えば「土日に何をしているんですか?」とかそういうことをヒアリングするんですよ。
- 山本:
- お客様のライフスタイル全般を調べる必要があるんですね。
- 田代様:
- あとは「今後どういう生活をしたいか」とか「お子さんに対してどういうしていきたいか」とか。
それによって、こういうスタイルのインテリアとか家だったらいいんじゃないですか、と提案します。店舗デザインの時も同じですね。回りくどくはあるのですが、「どの色が好きですか」「どの木が好きですか」とか。一辺倒な質問では相手の真意は引き出せないと思うし、几帳面な質問ばかりされるのは嫌だと思うのです。そういった堅苦しい雰囲気にならないためにも、お客様にリラックスしてもらうために自分はラフな格好がいいと考えています。
- 柳田:
- おっしゃる通りだと思います。田代さんのスタイルはお客様への思いやりということがよくわかりました。
決められたルールの中でも個性を出せたら楽しい
- 柳田:
- 田代さんがお仕事でお付き合いされる方々のファッションはいかがですか。ご自身がこれほどファッションに対してきちんとしたお考えをお持ちだと、逆に違和感を覚えることなどはありませんか。
- 田代様:
- メーカーの開発の人とお付き合いをする機会が多いのですが、彼らは現場の作業員でなくても作業服を着ているんですよ。
- 柳田:
- 白いワイシャツ・ネクタイの上にスーツではなく作業服を着ているということですか。
- 田代様:
- そうなんですよね。現場に出るわけではないので、無理して作業服を着なくていいのではないかなと思う時があります。もちろん作業員の方も同じ社内にいらっしゃるので違和感があるからかなとは思うのですが、畑も部署も違うのだから気にしなくていいと。ポーズだとは思うのですが、ポーズのためにしなくていいと感じることはあります。
リクルートスーツでも白いシャツに紺のスーツなんかも、当たり前すぎて、かえって何も考えてないのかなと感じます。きちんとすることで、自分で満足していてそれがおしゃれだと思ってるのは何が楽しいのかなと思います。
- 柳田:
- 作業服もリクルートスーツもきっとみなさんユニフォームととらえていて、そこに個性を表現するという考えはないのでしょうね。
- 田代様:
- 決められたルールの中でも工夫をして個性を出す方が楽しいと思います。もちろん汚い恰好をしてるにも限度があると思います。誰が見ても不快なものはよくないですし、それを個性というのはちょっとどうかと思います。
- 柳田:
- カッコイイ、カッコ悪いは主観によると思いますが、相手を不快にさせないための清潔感は重要ですよね。その中に自分の主張が入っている服を着る、コーディネイトができるといいと思います。そうすると服がすごく武器にもなるし、それが自分を持ち上げることになれば、洋服選びがもっと楽しくなるとすごく思っています。
インタビューを終えて
当店のスタンドカラーシャツとビズポロをご愛顧いただいている田代様。
インタビュー当日も「ノーネクタイが基本のスタイル」「色へのこだわり」というご自身の基準に沿ってお選びいただいたビズポロを上手に着こなしていらっしゃいました。
インテリアデザイナーとして、色にこだわることで個性を主張するなかで、接する方々にリラックスしてもらうためにノーネクタイでシャツを着用するという考え方に非常に強く共感を覚えました。
それは住空間を作る上で、お客様のライフスタイルを自然にお伺いすることができ、ご希望にお応えすることができるようにするための「思いやり」からくるもの。
これは、ファッションとは自己表現の一つであると同時に、接する方へのおもてなし・気配りの一つであると思いとまったくリンクするものであったからです。
そんなこともあって当日は広義にわたるデザインのお話しで大いに盛り上がりました。
田代様のお話しをお伺いして、「自由で快適なシャツスタイルの提案を通じて、ライフスタイルの変革・改善に貢献します」というozieの理念実現に邁進していきたいと思いました。
本当にありがとうございました。